個人情報漏洩の報告義務は何人から?1人分でも要る場合と、速報3〜5日・確報30日の期限
上司に「もし漏れたら、どこに何日以内に報告するんだ」と聞かれて調べているなら、社員1人の健康診断の結果を、宛先を間違えて社外に送っただけでも、国への報告が要ります。
01何人から? 4つのうち3つは、人数に関係ない
報告先は個人情報保護委員会です。個人情報を扱う会社を見ている国の役所で、ここからは「委員会」と書きます。
報告が要るのは、漏れたものが次の4つのどれかに当たるときです。1つ目は、要配慮個人情報が入っているとき。要配慮個人情報とは、健康診断の結果や病歴など、知られると差別や不利益につながる情報です。
2つ目は、クレジットカード番号のように、悪用されるとお金の被害が出るおそれがあるとき。3つ目は、不正アクセスや書類の盗難、社員による顧客データの持ち出しのように、わざとやられたおそれがあるとき。4つ目が、漏れた本人が1,000人を超えるときです。
1つ目から3つ目は、人数に関係がありません。顧客1人のクレジットカード番号が入った書類を、別の顧客に送っただけでも2つ目に当たります。置き忘れてなくしただけなら3つ目には入らず、中身と人数でほかの3つに当たるかを見ます。
① 要配慮個人情報が入っている(例:健康診断の結果)
② お金の被害が出るおそれ(例:クレジットカード番号)
③ わざとやられたおそれ(例:不正アクセス・盗難・持ち出し)
- ④ 漏れた本人が1,000人を超える
漏れたと決まっていない「おそれ」の段階でも対象。人数が確定できないときは、考えられる最大の人数で数える。
規則の原文(読まなくても大丈夫です)
- 個人情報の保護に関する法律施行規則 第7条
- (1) 要配慮個人情報が含まれる個人データ(高度な暗号化その他の個人の権利利益を保護するために必要な措置を講じたものを除く。)の漏えい、滅失若しくは毀損が発生し、又は発生したおそれがある事態
(2) 不正に利用されることにより財産的被害が生じるおそれがある個人データの漏えい等が発生し、又は発生したおそれがある事態
(3) 不正の目的をもって行われたおそれがある当該個人情報取扱事業者に対する行為による個人データの漏えい等が発生し、又は発生したおそれがある事態
(4) 個人データに係る本人の数が千人を超える漏えい等が発生し、又は発生したおそれがある事態
「うちは小さいから1,000人もいない」は、4つのうち1つにしか答えていません。委員会に届く報告も、ほとんどが小さな漏えいです。2025年度に法令にもとづいて届いた報告のうち、93.6%は漏れた人数が1,000人以下でした。
出典:個人情報保護委員会「令和7年度 年次報告」付表2(2)②。委員会に直接届いた分と、各省庁を経由した分の合計。
02何日以内? 速報は3〜5日、確報は30日。数え始めは誰かが知った日
報告は2回に分けて出します。1回目の速報は、知ってから速やかに出します。目安は概ね3〜5日以内なので、3日で出すつもりで動いておくと安心です。
速報は、その時点で分かっていることだけを、委員会のホームページの報告フォームに入れれば足ります。原因や本人の数がまだ分からなくても出せます。
2回目の確報は、知った日から30日以内です。土日祝日も数えに入り、決められた項目を全部そろえます。
数え始めの「知った」は、総務が知った日ではありません。会社の中の、どこかの部署が知った時点です。
たとえば人事の担当者が、社員1人の健康診断の結果を、宛先を間違えて社外に送ったとします。その担当者が誰にも言わなければ、総務が知らないまま日数だけが進みます。
「漏れたかもしれない」と思った人が、すぐ総務に言えるかどうか。それで、速報までに使える日数が変わります。
速報:概ね3〜5日以内(分かっていることだけ)
確報:30日以内(わざとやられたおそれは60日以内・土日祝日も数える)
- 概要
- 漏れた項目
- 本人の数
- 原因
- 二次被害
- 本人への対応
- 公表したか
- 再発防止策(実施済み/今後実施予定)
- その他
報告が要る漏えいなら、本人に知らせることも義務です。状況に応じて速やかに知らせ、知らせるのが難しいときは、公表などの代わりの手を取ります。
03確報で委員会が見るのは、再発防止策が原因に合っているか
確報の項目のうち、会社が自分で中身を考えなければならないのが再発防止策です。実施済みのものと、今後実施予定のものに分けて書きます。
委員会は確報を受けると、本人への知らせ方が適切か、原因を突き止めているかを確かめます。そのうえで、再発防止策がその原因に合っているかを確かめます。
年次報告の原文(読まなくても大丈夫です)
- 個人情報保護委員会「令和7年度 年次報告」
- 漏えい等事案の報告を受けて、委員会では、本人に対する通知(個人情報保護法第26条第2項)が適切になされているか、発生原因を適切に特定し、分析しているか、再発防止のための措置として記載されている事項が発生原因に適切に対応したものであるか等、施行規則第8条第1項各号所定の報告対象事項について、その内容を確認し(以下略)
たとえば原因が誤送付で、再発防止策が「研修を実施」だけだったとします。研修の出席簿で分かるのは、誰がいつ受けたかまでです。
原因は「宛先を確かめずに送った」です。研修のあと、社員が送る前に確かめるようになったかどうかは、出席簿のどこにも残りません。原因に合っていると示しやすいのは、社員が実際に確かめているかを見た記録のほうです。
出席簿で足りない理由は、「人的安全管理措置とは?」の記事にも書きました。
04社員が確かめてから渡すかを、測って残す
誤送付は、渡す前に中身と相手を確かめなかったときに起きます。いまは、ファイルを渡す相手が人だけではなくなりました。AIに読ませるときも、確かめずに渡せば、誤送付と同じ形の間違いです。
AI実技測定は、確かめるかどうかを測る演習です。会社がURLを配り、社員はいつもの仕事に似た問題をAIを使って解きます。問題の途中には、引っかけが3つ入っています。
第1問は、課長からの「スキャンをAIに読ませて一覧にして。今日中で」。申込書の束の下半分には、運転免許証のコピーが入っています。ほかの2問では、取引先を名乗る偽メールのリンクを押すか、AIが作った表の抜けに気づくかを見ます。
管理画面には、問題ごとの引っかかり率と、部署ごと・一人ずつの結果が並びます。社員が演習の中で書いた文章は保存しません。
どの部署の誰が、どの引っかけで確かめずに進んだかが残ります。確報の再発防止策を、原因に合わせて書くときの材料になります。
第1問を、あなた一人で3分。
- 名前もメールアドレスも要りません
- 社員には何も届きません。営業の電話もしません
- 料金は人数だけで決まります(50名なら年25万円・100名なら年40万円、税抜)
個人情報保護委員会「令和7年度 年次報告」 https://www.ppc.go.jp/files/pdf/080707_annual_report.pdf